アライバル
RELEASE:2011.3
(原書刊行は2006年)
(原書刊行は2006年)
世界各国で多数の賞を受賞、世界中に衝撃を与えた
グラフィック・ノヴェル。ショーン・タンの代表作。
漫画でもコミックでもない、素晴らしいセンス・オブ・ワンダーに満ちた「文字のない本」。
ARTIST′S FEELINGS ショーン・タンが作品に込めた想い
ショーン・タン自身が思う『アライバル』の世界について
ショーン・タンは、自身の公式サイトであるhttps://www.shauntan.net で、作品について書評記事の紹介のほか、自分自身の考えをかなりの長文で説明を加えています。『アライバル』は特に文字のない絵本のため、こうした文章での説明文は、読む人をさらに深く彼の物語世界へ連れて行ってくれ、理解も深まることでしょう。日本版公式サイトでも、これからこうした英文を翻訳して紹介したいと思います。
ショーン・タンの日本における代理人 みにさんオススメポイント
『アライバル』の企画を当時所属していた河出書房新社で提案すると「文字のない本は売れない」と散々、言われました。原書刊行から既に5年が経とうとしており、自分はかなり遅れてから本書の存在を知ったので、むしろ存在を知った今、本として、強烈に手元に欲しいと思ったのに、どうして? なぜ、他社は企画しなかったの? と不思議で仕方ありませんでした。後から分かりましたが、児童書専門の出版社にとっては「子どもの本らしくない」し、逆に一般の、大人のための本を編む出版社は、私と同じようにアンテナに引っかからず「大人の本らしくない」と、どちらのジャンルにも入らずすっぽり抜け落ちてそのままだったのです。10年前に、エドワード・ゴーリーという作家もこうした状況で長らく出版されずにおりましたが、同じように子どもの本でも大人の本でもない、そういう本が大好きな自分としては、ゴーリーと違ってこの作家はまだ生きている(笑)し、若いし、画力は素晴らしいから、これからずっと一緒に本作りができるぞ、と、ともかくあの手この手で「売れます」と説得してようやく会議を通過させたのでした。その後の制作もなかなか大変でしたがようやく海外での印刷製本も終わり、ほっとした3月。あの、未曾有の大震災の日、11日のお昼に見本が届いたのでした。翌週17日に配本出来るかどうか、また秋に次作『遠い町から来た話』の刊行と合わせて作家来日予定をしていたものの、原発事故のため来日中止をする傾向もあったので、なんとまたハードなタイミングでの発売かと嘆いたことを、昨日のことのようによく覚えています。 しかし、電気のないなか、文字がない本書を家族皆で見て読んでこの物語の主人公たちと同じような不安を抱えつつ、明日の希望を見出そうとする読者が口コミで本書を広げていってくれました。「初版6000部が売れるのに3年はかかる」と営業部から言われていたのですが、3か月で初版が売れて心底嬉しかったです。
㈱みにさん・田中優子事務所
代表=田中優子略歴
河出書房新社で「文藝」編集部勤務後、翻訳出版書籍編集を中心に従事。版権業務を長く担当、海外のブックフェアへ赴き版権輸入だけでなく日本語の本を海外へ輸出する事業も担当。2020年春、独立。ショーン・タンの日本における代理人としてマーチャンダイジング等、多方面で活動中。 最新の編集作品は『日々のきのこ』(高原英理著)、『旅する小舟』(ペーター・ヴァン・デン・エンデ著)。