ショーン・タン

いぬ

RELEASE:2022.07
(原書刊行は2020年)

わたしが走ると、きみも走った。
きみが呼べば、わたしは答えた。ショーン・タン、最新作。

2020年刊行の『内なる町から来た話』に収録された作品をシングルカット、
犬と人間の繋がりを描いた傑作 。

ARTIST′S FEELINGS ショーン・タンが作品に込めた想い

「あとがき」より抜粋

犬と人間の関係は、ほかのどんなものとも似ていない。種族を越えた友情は数あるが、これほど大規模かつ変化に富んで長い歴史をもつものは、おそらくほかにないだろう。一万五千年もの昔から、犬と人間は数々の歴史の荒波やあまたの社会の盛衰を乗り越えて友情をはぐくみ、互いに影響を与えあってきた。近所の公園を犬を連れて散歩する人たちを見るたびに、僕は胸が熱くなるのを抑えられない。この強くて愛情あふれる奇妙なつながりが、ごく自然にそこにあることに。

ショーン・タンの日本における代理人 みにさんオススメポイント

 ショーン・タンは、あるインタビューを受けた時にこんなことを話していました。
「僕は人間と動物や植物の違いがどこにあるのか、小さい子供のころはよくわからなかった」 ……だからでしょうか、彼の描く世界では動物も人間も同じような位置にいるようで、人間が偉いとか人間が他の動物を支配しているとか、そうした関係性が希薄な気がします。
 そんな彼が描いた短編連作集が『内なる町から来た話』で、章には文字ではなく動物たちのシャドウ、形だけで区分けされていました。その中から犬についての一編をいわばシングルカットしたのが本作です。
 既刊タイトルに『セミ』『ウサギ』とカタカナが続いていたので今回も『イヌ』かしら?と思いきや、訳者岸本佐知子さんから「カタカナのイヌって、ネガティブなイメージがあると思うから、ひらがなで」との連絡が。結果、ひらがなの『いぬ』は、思いのほか今回の優しいイメージにぴったり寄り添いました。

㈱みにさん・田中優子事務所 代表=田中優子略歴
河出書房新社で「文藝」編集部勤務後、翻訳出版書籍編集を中心に従事。版権業務を長く担当、海外のブックフェアへ赴き版権輸入だけでなく日本語の本を海外へ輸出する事業も担当。2020年春、独立。ショーン・タンの日本における代理人としてマーチャンダイジング等、多方面で活動中。 最新の編集作品は『日々のきのこ』(高原英理著)、『旅する小舟』(ペーター・ヴァン・デン・エンデ著)。